生命シグナルを探知できるスキャナーを開発中!地球外生命の発見に利用できる可能性

生命反応のある惑星 テクノロジー

生物だけが発する偏った光を検出することで、生命を発見できる検出器を科学者たちが開発しています

人気テレビシリーズ「スター・トレック」で宇宙船エンタープライズの乗員が新しい惑星に到達したとき、最初にするのが惑星に生命がいるのかどうかをスキャンすることです。現実の世界においては、研究者たちが、遠く離れた系外惑星上に明確な生命シグナルを見つける方法を長らく研究しています。

そして、その努力は一歩、歩を進めました。新たな遠隔検出技術が生み出されたのです。生化学的な性質によって放射される螺旋状の光は、生命によってしか生み出されないような、明確な傾向を示します。それを検出するのです。「Astrobiology」で発表されたこの方法は、宇宙の探索に応用されることで、宇宙に生命がいるのかを発見する助けとなるでしょう。研究はライデン大学のフランス・スニクらによって行われました。

生命にしか発することのできない光

現在、遠くの惑星に生命を見つける試みとして考えられているのは、惑星から来る光をとらえて、その化学構成を知ることです。その惑星に生命圏があるのかどうかを明確に示す指標がなにかないか、研究者たちは知りたいと思っています。

例えば、豊富な酸素が系外惑星の大気に存在すれば、その酸素を生み出したり吸っている生き物がいる可能性があります。しかし、生物がいなくても酸素分子が生み出される自然現象はあり、生命がいないのにいるものと信じ込まされる可能性があります。

なので、研究者の中には鎖状の有機分子を探すのが良いとする人たちがいます。この生き物が持っている化学物質の鎖は、2つの種類に分けられることが知られています。掌性という性質によって全く同じ化学組成でも右手型と左手型の鏡像対称なものが存在するのです。生物の関与しない自然界では、右手型と左手型は同数生み出されます。

掌性

Sookyung AnによるPixabayからの画像

しかし、生物はこの同数性を破り、偏りを生み出すのです。地球上に存在する生物は一方の型だけを生み出します。例えばタンパク質の原料であるアミノ酸はすべて左手型の分子です

これらの異なった掌性を持った長い鎖状分子に、光が当たると光は円偏光するようになります。つまり、電磁波である光の持つ波形が、時計回りか、反時計回りの螺旋状になって空間を進むようになるのです。非生物の分子では、このような螺旋形の波長は生まれません。

生物センサーの正体は円偏光を見つける検出器

運動場

Photo credit: rutlo on VisualHunt / CC BY

以前、査読のないオンライン速報誌「arXiv」で発表した論文では、採ってきたセイヨウヅタの葉を観察しており、葉緑素が円偏光を生み出す様子を見ています。葉っぱが腐食してくると、円偏光は次第に弱くなり最後にはなくなってしまいます。

次の段階として、野外でこの技術の検証を行いました。ライデン大学の屋上に設置した検出器を近くの運動場の芝に向けたのです。しかし、円偏光した光は見られませんでした。しかしそれは、検出器が機能していないという意味ではありませんでした。運動場の芝は人工芝だったのです。そこで、標的を数キロ先の森に合わせたところ、円偏光のシグナルが強くはっきりと確認できました

地球外の生物でも同じような掌性の偏りを持っているのかどうかはわかりません。しかし、生物が炭素を基盤にしているのならば、同じ掌性に偏っていたほうがうまく機能するはずです。

研究チームは現在、この装置を国際宇宙ステーションに設置するための設計を行っています。地球上の円偏光の分布地図を作って、遠くの惑星からの光の中の類似したシグナルがどのように見えるのかを確かめたいと思っています。

系外惑星が放つ光は小さく、主星の数百億分の1しかありません。なので惑星に生命がいたとしても、その円偏光シグナルは非常に小さなものでしかないでしょう。ただ、円偏光シグナルには曖昧な部分がありません。なので、その小さなシグナルを見つけ出せれば、生命の存在を証明できるのです

将来建造される予定の、巨大な宇宙望遠鏡などを使えば、かすかなシグナルを捕まえることができるかもしれません。また、太陽系内部で生命の存在が期待されている、エウロパやエンケラドスにこの生命検出装置を向けることで、生命の痕跡をいち早く見つけることができるかもしれないのです。

参考記事: Live Science

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