交感神経が原因!ストレスで髪が真っ白になるメカニズムが解明される

サイエンスニュース

ストレスで白髪が増えることは経験的にわかっていましたが、そのメカニズムは不明でした。今回、交感神経が直接色素幹細胞に作用して永久的なダメージを与えるメカニズムが明らかになりました

死の恐怖で一瞬で黒髪が真っ白に、なんてことは漫画など架空の物語でしかありえませんが、強いストレスで生えてきた髪が白髪になることは知られています。ストレスで急に白髪になる逸話として有名なのは、フランス革命でマリー・アントワネットが死刑を言い渡された時のものです。処刑台に上がった彼女の髪は真っ白になっていたと言われています。

強いストレスと白髪の関係は逸話レベルでは有名ですが、科学的な証明はなされていませんでした。今回この証明を行ったのは、ハバード大学のスー教授らのグループで、論文は科学誌「Nature」に掲載されています。

白髪を誘導している原因を絞る

Credit: Wikipedia

髪の毛に色をつけているのは色素を作っている色素細胞です。毛は毛包で色のない状態で作られ、色素細胞によって色素が加えられて色がつくのです。白髪になるのはこの色素が作られないか、色素細胞がなくなるからだと考えられます。ストレスはどのように色素細胞に影響を与えてるのでしょうか。

ストレスは体全体に影響を及ぼします。なのでまず、研究者たちはどの体内システムが、毛髪の色を変化させる原因となっているのかを絞りました。最初の仮説は、ストレスによって免疫系が活性化し色素細胞を攻撃しているというものでした。まず、免疫系に注目したのです。しかし、免疫系が壊れたマウスで実験した結果、それでも毛の色が白くなることがわかったため、この仮説は棄却されました。次に、ストレス時に上昇するコルチゾールというホルモンに注目しました。内分泌系に注目したのです。しかし、この説も行き詰まりました。コルチゾールを分泌する副腎を取り除いたマウスでも毛が白くなってしまったからです。

Credit: William A. Gonsalves

次に神経系を調べました。ストレス時に闘争逃走反応を引き起こす交感神経を調べたのです。交感神経は、皮膚にある毛を作っている毛包につながっています。研究者たちは、ストレスによってこの交感神経がノルエピネフリンを放出しており、これを近くの色素幹細胞が取り込んでいることを発見しました

交感神経と毛包

credit: Harvard University

恒久的なダメージ

毛包には細胞を生み出す幹細胞があって、毛に色を着ける働きをする色素細胞も幹細胞から生まれています。色素幹細胞がノルエピネフリンを取り込むと幹細胞の働きが過剰に活性化し、幹細胞がすべて、色素細胞になってしまいました。それにより幹細胞がなくなってしまうことでそれ以降色素細胞が作られなくなってしまうのです。

普通ストレスによって追ったダメージは一過性であり、ストレスが消えるともとに戻るのですが、色素幹細胞は強いストレスからほんの数日で使いつくされなくなってしまうため、それ以降永久に色素細胞が作られることはなくなってしまうのです。

急激なストレスが神経を介して幹細胞に影響を及ぼすというのは、今までわかっていませんでした。今後神経と幹細胞の関わりという新たな視点から研究が広がるでしょう。

参考記事: Medical X Press

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