ハエをゾンビ化!腹部を食らいながらも生かし続ける菌類を2種類発見!

生物学

宿主のハエを生かしてまるでゾンビのように活発に行動させながら、胞子を振りまく新種の菌類が発見されました

普通なら死んでしまうような体内の損傷を負わせながらも殺さない性質から、新しい薬が発見されるのではないかと期待されています。

これらのハエにしか感染しない新種の菌類は、デンマークで発見され、論文は「Journal of Invertebrate Pathology」に掲載されました。

コペンハーゲン大学の研究者が発見したこれらの菌類は、ストロングウェルセア・ティグリナ(Strongwellsea tigrinae)とストロングウェルセア・アセローザ(Strongwellsea acerosa)で、デンマーク固有のハエに感染します。

多くの菌類は宿主が死んでから胞子を生じるのですが、ストロングウェルセアが感染したハエは数日の間生き続け、通常通り活動し、他のハエとも接します

その間、菌は生殖器や脂肪組織、そして最終的には筋肉まで栄養として吸収し、生きている間に数千もの胞子を、他のハエに対して放出します。

数日後、ハエは後ろ向きに倒れて、2,3時間の間けいれんし、最後には死んでしまいます。

ゾンビハエ

credit: Faculty of Science/ University of Copenhagen

この、胞子を放出する間宿主を生かし続ける珍しい戦略は、アクティブホストトランスミッション(ATH)と呼ばれています。

この戦略により、この菌は他の健康な個体へと感染する効果的な経路を獲得できます。

研究者たちは、この菌類が宿主をゾンビ化させる覚せい剤のような物質を作っているのでは無いかと考えています

つまり、感染後の数日間生きている状態を保てる物質です。

研究者は、その物質は中枢興奮作用をもつアンフェタミンのようなもので、死ぬまで活動レベルを上げ続けるのではないかと考えています。

また、感染の傷口から微生物の侵入を防ぐような物質も作っていて、長く生かすようにしているのではないかとも考えていますが、これはまだ研究中です

この菌類は形はまるでロケットあるいは魚雷のようであり、素早く動けるようになっています。

空中を飛んで他のハエの外皮にくっつくと、そこから腹部へと潜り込んで増殖を開始します。

一回の感染で合計数千もの胞子が放出されるそうです。

この寄生性菌類の感染率は小さく、全ハエ個体のうち3から5%です。

AHTの研究が難しいのは、宿主が感染後も通常のように活発に行動し続け、いつ感染したのかわからないからです。

AHT戦略をとっている属は今の所2つしか見つかっておらず、一つが今回のストロングウェルセアで、もう一つはセミに寄生するマソスポーラ(mossospora)属です。

1993年と1998年に見つかった2つの種が今回新種として公式に認められたのですが、今の所ストロングウェルセアには全部で5種が見つかっています。

マソスポーラの研究者は、今回の発見もまだ氷山の一角で、AHTを行っている種はもっといるのではないかと考えています。

生きた屍として、胞子を健康な個体へ振りまき続ける。まるでゾンビ映画ですが、ハエやセミの世界では実在することのようです。

人間をゾンビ化させるような秘密の研究はいらないですが、死なせない能力の研究から得られるものは大きいように思えます。

ゾンビの研究から新薬が生まれるかも?

参考記事: The Guardian

 

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