子供の頃、私達は数字には偶数と奇数があることを習いました。数字を偶数と奇数に分ける方法はいくつかあります。
数字のひとけた目が1,3,5,7,9で終わっていれば、奇数であり、2,4,6,8,0で終わっていれば偶数であるという法則を記憶しているかもしれません。または、数字を2で割って、割り切れれば偶数で、そうでなければ奇数になります。
同様に、実際の物体を使う場合は、対を作るという方法もとれます。対を作って残りが出れば、その物体の数は奇数であるということになります。
現在、偶数と奇数の分類は、パリティ分類とも呼ばれていて、人間以外の動物で見られたことはありません。「Frontiers in Ecology and Evolution」で発表された新たな研究で、この奇数と偶数の分類をミツバチが学習できることが示されました。
どうしてパリティ分類は特別なのか?
パリティの処理(奇数と偶数の分類のような)は人間による抽象的で高度な数字概念だと考えられています。
面白いことに人間は、数字を奇数と偶数に分けるとき、正確性や速度、言語や空間との関連付けにおいて、偏りが現れます。例えば、右手を使って偶数を数えると早く反応できる傾向があり、奇数だと左手のほうが早くなります。
また、数字を分類するときに偶数のほうが奇数よりも、早く正確に分類できます。また研究では、子どもたちが「偶数」を「右」と、「奇数」を「左」と関連付けるのが普通だということがわかっています。
こういった研究から、人間は奇数と偶数に関する偏りを、学習で得ているのか、あるいは生まれつきで偏りを持っている可能性があり、こういったものが、進化や文化の伝達、あるいはその組み合わせで、作られる可能性があります。
なぜパリティが、数学で使われる以上の重要性を持つ可能性があるのかは不明で、こういった偏りの起源も不明です。人間以外の動物が、奇数と偶数を認識できる、あるいは認識を学習できるかどうか、そしてどのようにしてそれができるのかがわかれば、人間のパリティの歴史がもっとよく分かるでしょう。
ミツバチに奇数と偶数を教える
以前の研究では、ミツバチは量の順番を学習でき、簡単な足し算や引き算、量とシンボルの関連付け、大きさと数の概念の関連付などができることが示されています。
ハチにパリティの識別を教えるために、ハチを2つのグループに分けました。一つのグループでは、偶数と甘い砂糖水を関連付け、奇数と苦い液体(キニーネ)を関連付けました。もう一つのグループでは、奇数を砂糖水と、偶数をキニーネと関連付けるように訓練しました。
個別のミツバチをトレーニングするために、奇数と偶数(1個から10個までの模様をプリントしたカードを使って)を比較させ、正解を80%まで選ぶようになるまで訓練しました。
驚いたことに、グループによって学習の速度が異なっていました。奇数と砂糖水を関連付けるように訓練したハチのグループは、学習スピードが早かったのです。ハチが奇数に示した学習の偏りは、偶数を早く分類する人間とは反対です。
それから、訓練の間は示されなかった、新しい数字が、ハチごとに示されました。すると、驚いたことに、11や12といった新しい数を分類して、奇数と偶数をおよそ70%の正確さで判別できたのです。
これらの結果は、ミツバチの小さな脳が、奇数と偶数の概念を理解できることを示しています。つまり、860億個の神経細胞からなる大きくて複雑な人間の脳と、96万の神経からなる小さな昆虫の脳の両方が、パリティによって数を分類できるということです。
これは、パリティの処理が私達が思っていたよりも単純だったことを示しているのでしょうか。答えを見つけるため、生物にヒントを得て作られたテクノロジーに目をつけました。
単純な人工ニューラルネットワークを作る
人工ニューラルネットワークは、機械学習用に開発された最初の学習アルゴリズムの一つです。生物の神経にヒントを得て作られており、ネットワークは拡張可能で、複雑な認識や分類作業を命題論理を使って取り組むことが出来ます。
研究では、たった5個の神経からなる人工ニューラルネットワークを構築して、パリティテストを行いました。ネットワークには、0から40までのパルスが与えられ、奇数か偶数に分類させられました。ネットワークの単純さにも関わらず、ニューラルネットワークは、パルスの回数を奇数と偶数に100%の正確さで分類しました。
これはつまり、原理的には、パリティの分類には、人間の持つような大きくて複雑な脳を必要としないということになります。しかし、だからといって、ミツバチと単純なニューラルネットワークが同じ仕組みで処理を行ったということは言えません。
単純?それとも複雑?
まだ、ミツバチがパリティの処理をどのような方法で達成したのかを知ることは出来ません。説明としては、単純なものと複雑なものとがあります。たとえば以下のとおりです。
- 要素の対を見つけ、対のない要素を見つける。
- 割り算を行う。ハチが割り算を行ったという報告は今の所ないのですが。
- 要素を数えて、全体量に対して、奇数、偶数を分類するためのルールを適用する。
他の動物種に奇数と偶数の識別や、他の抽象的な数学の解き方を教えることで、数学や抽象的思考が、人間の中でどのように生まれてきたのかを知ることが出来ます。
数学の発見は、知性を持つことの避けがたい結果なのでしょうか。それとも、数学は人間の脳と関連づいているのでしょうか。それとも、人間と他の動物との間の違いは、考えられているよりも小さいのでしょうか。問い方を間違えなければ、おそらくそういった知的な洞察を得ることも可能でしょう。
参考記事: The Conversation
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