6年で実現?遺伝子操作で現代にマンモスを蘇らせるスタートアップ企業

マンモス 生物学

2年と少し前、技術系連続起業家のベン・ラム氏が、ハーバード大学の有名な遺伝学者ジョージ・チャーチ氏に手を差し出しました。二人はボストンのチャーチ氏の研究室で会って、スタートアップ企業・コロッサルのきっかけとなる実り多い会話行いました。この企業の存在が公になったのが、先週の月曜日です。

このスタートアップの目的は野心的であると同時に少しイカれています。その目的とは、絶滅にひんしているアジアゾウを遺伝子操作することで、北極の低温にも耐えることのできる、絶滅したマンモスに似た新しい種類の生物を生み出すことです。

計画自体は何年も前から始まっていたのですが、本格的な研究を開始するのに十分な資金を提供する人はいませんでした。しかし現在、この企業は初期資金として1500万ドルを様々な投資家と、CEOとなったラム氏から集めています。

「私達がそれまでの15年間で得た資金は10万ドルです。これは私のラボの他のどのプロジェクトよりも遥かに少ない金額ですが、熱意がなかったなかったためではありません」とチャーチ氏はCNBCに述べています。「それは非常に好ましい話です。私達はこの話題についてこれまで何年もプレスリリースを出すことはありませんでした。ただ、会話する中で自然と生まれたのです。」

ラム氏とチャーチ氏

ラム氏とチャーチ氏 credit: Colossal

チャーチ氏は、ハーバード大学医学部におけるロバート・ウィンソロップ遺伝学教授であり、ハーバード大学のワイス生物工学研究所の教授会員でもある、科学分野では素晴らしい肩書をもちます。また、パーソナル・ゲノム・プロジェクトを立ち上げ、20社以上の会社を始め、100名以上の患者をとっています。

今まで、チャーチ氏のマンモスを蘇らせるというビジョンは、「夢物語のたぐい」だったと言います。「ベンは青天の霹靂でした。わたしは、この資金が十分でないカリスマ性のあるプロジェクトについて彼が読みとったものの深さにインスピレーションを得ました。」

チャーチ氏がCNBCに語ったことによると、コロッサルが最初のぞうの子供を作るには少なくとも6年かかります。この予定は、攻めたものであるということも認めています。かつて同じ質問をされた際には、「わからない。資金がないからね」と答えていたそうです。「しかし、今はそう答えません。6年という答えは、論外ではないのです。」

「私達の目標は、繁殖可能なマンモスの群れの復活に成功することであり、そうすると北極圏の再野生化にテコ入れできます。その後、これらの技術をテコ入れしたいと思っていて、それは、私達が思慮深い破壊的な保存と呼んでいるものの役に立ちます。」とラム氏はCNBCに述べています。

ツンドラ

Free-PhotosによるPixabayからの画像

このプロジェクトの提唱者は、マンモスによる北極圏の再野生化は、永久凍土の融解速度を遅くすることでその中に含まれるメタンの放出を遅らせ、地球温暖化のスピードを抑えられると言います。

ラム氏は複数の企業スタートアップを創設、売却しており、その中にはライブパーソン、ジンガ、アクセンチャ−が含まれます。そして、最近では、人工知能の提供者であるハイパージャイアントの創始者兼CEOでした。

ラム氏がCNBCに述べた事によると、コロッサルは利潤を求める会社ですが、投資家のためにすぐに資金を生み出すようなものではありません。「私達の投資家の中には、今すぐマネタイズすることに注視する人はいませんし、それは素晴らしいことです。」

1500万ドルのシードラウンドはトーマス・トゥルに率いられており、他の参加者には、ティム・ドレーパーのドレーパーアソシエイツや、ウインクレボスキャピタル、自己啓発のグルであるトニー・ロビンスなども含まれます。

投資家兼アドバイザーのザ・エクスプローラーズクラブの社長であり、TVゲームの起業家で、宇宙旅行のために3000万ドル支払った、リチャード・ガリオットは、CNBCに答えて、マンモスにとどまらない、特別な目的のために生物をデザインする科学としての、合成生物学の応用の未来について、興奮していると語っています。

「絶滅種復活が現実になることの驚きを超えて、絶滅種復活に使われる技術がの誕生は始まったばかりです。同じ技術を使えば、人類が抱える多くの種類の問題を解決できるでしょう。合成生物学によって、私達は新たな生物を生み出すことができ、石油やプラスチック汚染の清掃や、炭素の抑制やその他の大きな問題に対処できるでしょう。組織への拒絶反応の解決や人工四肢は、すべての人類の寿命の延長や人生の改善の助けとなるでしょう。」

遺伝子操作された象

象

Sasin TipchaiによるPixabayからの画像

マンモスの殆どが絶滅したのは1万年前ですが、その最後の名残りは4000年前まで生き延びていました。

しかし、遺伝学的には、マンモスはアジアゾウに非常によく似ています。

「アジアゾウは絶滅危惧種です。なので、私達はこれを保存したいと思っています。」とチャーチ氏は述べています。

「絶滅の一途をたどっている大きな原因は2つあります。一つはヘルペスウイルスです。もう一つは、人間のそばで生活していることです。なので、私達はこれら2つを正すため、彼らに新たなすみかを提供したいと思っています。そこには、広大な空間があり、人間はほとんどいません。つまり、カナダの北部、アラスカ、シベリアです。」

なので、コロッサルの目標は、アジアゾウを遺伝子操作してヘルペスウィルスへの耐性を付与し、極寒に耐える能力を与えることなのです。

コロッサルが作ろうとしている小象は、見た目も行動もマンモスそっくりになると、チャーチ氏は説明しています。

SFみたいな話ですが、チャーチ氏はアジアゾウの遺伝子改造ができるということに自信を持っているといいます。というのも、氏は似たような遺伝子改造を豚に施した経験があり、そのときには、42個もの遺伝子編集を豚の細胞に行っているからです。

「それから、それらの細胞をDNAを含んだ核移植によって移しました。この場合は卵細胞への移植で、その細胞は成長して子豚になりました。」

これらの遺伝子改変された豚は健康で、臓器移植に使えるほどであり、3つの医療機関で、臨床前試験が行われています。

「これが、私達が成し遂げられることを示す概念実証研究です。私達はこの実験を、象の研究を前提として行ったのではありませんし、そもそもの研究を目的として行ったのですが、象への応用に対する自信を与えてくれます。」

人工子宮

人工子宮で育てられる子羊
Credit: Nature Communications

遺伝子改変された象は最初に、工学的に作られた子宮内膜へ移され、それから、袋の中で育てられます。それは、人工子宮に似たものであり、2017年にフィラデルフィアの科学者たちが、遺伝子改変した子羊を育てたものに似ているといいます。

コロッサルは、シベリア北西部のコルィア川沿岸の自然の残った、更新世パークへマンモスを繁殖させるために、ロシアの科学者と手を組んで働きたいと思っています。理想では、ツンドラを現在の森林の代わりに草原に戻すという長期計画の手始めがマンモスです。

もし、蘇ったマンモスが、北極圏で個体数を増やしたとすれば、小さな木々をなぎ倒して、草原が生い茂るのを助けることになるでしょう。草原は針葉樹の暗い幹よりも、日光をよく反射します。また、マンモスは雪を踏み固めることで、より溶けにくくするでしょう。

草原は生態系を冷やし、永久凍土が溶けて閉じ込められた地球温暖化の原因となるメタンが放出されるのを妨げます。

メタンが放出されると、それは一分子あたり二酸化炭素の30倍もの温室効果を持ちます。

「つまり、少なくとも人間の観点からは、より健康的な生態系に戻すためにすでに必要な9つの種にもう1つの種を追加するという考えです。」

参考記事: CNBC

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