現存する生物はすべて進化によって生まれました。過去に栄えた生物も進化によって生まれたものです。ならば、恐竜が現代に、再び進化によって生まれることはないのでしょうか?
恐竜は中世代にさかえ、絶滅したと考えられますが、厳密に言えばそうではありません。
現存する鳥類は、恐竜の生き残りだからです。
しかし、鳥類が恐竜の生き残りだというのは質問の答になっていないでしょう。
現代に、ティラノサウルスやトリケラトプスが再び生まれてくるかどうか、ということだと思います。
もし、そうなれば素晴らしいのですが、実際にはほぼありえないことです。
現存する鳥と恐竜の間には何百万世代もの間が空いており、一世代で進化が起きるなんてことは無いからです。
そのため、現在の鳥はかつて陸上をのし歩いていた恐竜とは、見た目も鳴き方も行動も異なっているのです。
動物は進化するが、どのように進化するかは選べない
このことを理解するためには、「進化」がどのようなものであるのかを知る必要があるでしょう。
進化とは、生き物が何百万年から何億年かけて過去の時代に生きた生物から、どのようにして生まれたのかの過程を説明したものです。
違う種類の生物は、違った進化の過程を経て、世界で生き残る助けとなるような性質を獲得します。
例えば、6千6百万年前、中世代に恐竜を絶滅に追いやった大災害で、鳥は生き残ることができました。
小惑星の衝突後に、灰が世界を覆ったので、植物に必要な日光はさえぎられてしまい、植物を餌としていた生き物は生存が難しくなりました。
しかし、鳥は生き延びました。
それは、当時も鳥は小さく、えさは植物の種や昆虫であり、隠れる場所もかんたんに見つかったからでしょう。
さらに、鳥は空を飛べるため、遠くまで餌や隠れ家を探しに出かけることができたのです。
恐竜が絶滅した災害が、再び現代に起こったとして、現代の動物が先祖返りして恐竜になることはありません。
それは、現存する生き物が経た進化の過程が、恐竜のものとはまるで違うからです。
鳥が羽を進化させたのは、過去の世界よりも、現代の世界で生存するのに役立っているからです。
そして、羽を持つことで、将来の世界の環境への適応に制限がかかることもありえます。
ニワトリが先か、恐竜が先か?
実際の恐竜は、恐竜類として知られている分類に属しています。
鳥もトリケラトプスも、同じ恐竜類の祖先を持っています。
つまり、鳥類を除くと、恐竜類に含まれる現存する生き物はありません。
そのため、将来恐竜が進化して出てくるとすると、可能性があるのは鳥類からということになります。
絶滅した恐竜には、竜脚類やステゴサウルス、アンキロサウルスや、獣脚類、角竜や、鳥ではない鳥脚類がいました。
現代の鳥は、鳥脚類の中の小さなグループから進化してきています。
しかし、長い時間がたっているため、その関係も薄くなってきています。
詳しく言うと、鳥類は恐竜とは大きく異なった遺伝子の集合「ゲノム」を持っているのです。
ゲノムは次の世代に同じ形質を引き継がせる、規則の集合です。例えば、あなたの目の色がおじいちゃんと同じであるのは、引き継がれた遺伝子が同じだからです。
しかし、世代が離れるにつれて、遺伝子の集合の違いも大きくなってしまいます。
もし、進化が起こるとすれば?
鳥が、ティラノサウルスやトリケラトプスのようになるにはどれほどの変化が必要となるでしょうか?
恐竜は長い、骨からなるしっぽを持っていました。
しかし、鳥は短いしっぽしか持たず、それが1億年も続いています。
とても、遺伝子が残っているとは思えません。
また、現代の鳥は、後ろ足だけで歩き、つま先は4本、翼の指は3本です。
それをトリケラトプスと比べてみると、トリケラトプスは4本足で歩き、前足の指は5本あり、内側の3本は重さに耐える強度がありました。後ろ足のつま先は4本です。
鳥がトリケラトプスのように5本指になることは不可能では無いかもしれません。
ヒトにも多指症というものがあって、5本以上の指を持っているヒトもいます。
しかし、そのようなヒトは多くありません。
また、足の指の数が、生存に直結するような環境というのは、それほどないでしょう。
もし、鳥が後ろ足と翼を使って、歩けるようになったとしても、トリケラトプスと同じように歩くことはないでしょう。
トリケラトプスの前足と翼では、その使用目的がとても異なっているのですから。
恐竜は過去のもの
化石による発見から、トリケラトプスやティラノサウルスの皮膚は鱗で覆われていたことがわかっています。
鳥は、足の先は鱗で覆われていますが、全身は覆われていません。
鳥に羽の代わりに鱗で覆われることを強いるような、環境というものを想像するのは難しいです。
鳥は空を飛ぶためや、体温を維持するため、あるいは、異性を引きつけるための羽が必要なのです。
トリケラトプスは、くちばしを持っていましたが、鳥のくちばしとは全く無関係に進化しました。
トリケラトプスのくちばしには、他の生物では見られない付加的な骨がついています。
そのうえ、くちばしと顎の後ろには、一列の歯がありました。
ガチョウのくちばしには、歯のようなギザギザがありますが、歯を持つ鳥というのは、6千6百万年の間に1種類もありません。
このように大きな違いがあるため、鳥が進化して絶滅した恐竜のようになるということはありえそうに思えません。
また、映画の中以外で、生きた恐竜が再び現れるということは、これからも起こらないでしょう。
しかし、永久凍土で見つかったマンモスの遺伝子を使って、現代にマンモスを蘇らせるような研究は行われています。
うまくいくかはわかりませんが夢のある研究ですね。
参考記事: The Conversation
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