糖尿病の治療に使われている薬「セマグルチド」に体重を減少させる効果があることが、医学誌「the New England Journal of Medicine」に掲載された論文で明らかにされました。
セマグルチドは、食欲をコントロールする中枢に対して影響を及ぼすことによって、被験者の体重を20%も減少させることができたと報告されています。
研究は、国境を超えた16の国の被験者の協力のもと3000人という大規模で行われたもので、被験者の3分の1で20%以上の体重の減少し、4分の3が10%以上の減少を示していました。
現在、セマグルチドを処方できるのは、糖尿病の患者に対してで、食欲をコントロールすることで、カロリーを制限することができます。
研究を行ったのはユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンで、筆頭著者の一人であるレイチェル・バターハムさんは、この結果が大きなブレイクスルーであると述べています。
というのも、これほど大きな体重減少を成し遂げた薬は今までになく、外科手術によってでしか実現できなかったレベルの減少率を叩き出したからです。
肥満は、生活習慣病につながるだけでなく、COVID-19などの感染症の重症化を引き起こすリスク要因にもなり得ます。
そのため、健康維持の観点からも、肥満を抑えることは重要なのです。
ただ、この薬は痩せ薬というわけではありません。
好きなだけ食べてもこの薬を投与すれば痩せることができるというわけではないからです。
そのため、やせるためには食や運動といった、ライフスタイルの変更も求められます。
肥満治療に処方される場合は、行動の改善とセットで進められることになるでしょう。
とはいえ、食欲がおさえられるということは、自然と食べる量も減ることが期待されますし、実験でもそれは証明されています。
セマグルチドは皮下注射で投与されることが多いですが、飲み薬も最近出てきているので、薬を飲むだけで手軽に痩せることができるようになるかもしれません。
今回の論文を根拠にして、イギリスやヨーロッパ、アメリカでは承認の手続きが行われています。
すでに、糖尿病の薬として使われている実績もあるため、承認される可能性は高いと思われます。
日本でも肥満に対して処方される日は、近いかもしれませんね。
参考記事: CNN
コメント