SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされたCOVID-19パンデミックは、世界中の人々の生活を変えてしまいました。2021年8月現在までに、アメリカだけでも63万人以上の死者が出ています。このパンデミックを終わらせるための一つの方法として、COVID-19ワクチンが重要であることに、医療の専門家たちは同意しています。
しかし、ワクチンを打つことに関しては、怖がる子供や大人もいるかもしれません。さらに、COVID−19ワクチンの働きについてはたくさんの情報があり、中には理解が難しいものもあります。そこで、COVID-19ワクチンがどのように働くのか、わかりやすく解説していきます。
ワクチンは侵入者に似たものとして作られる
ワクチン理解の上で最も重要なのは、ワクチンは、病原体に感染することなく、感染に対してどのように防御力を上げればよいのかを身体に教えるということです。そのようにして、ワクチンは病原体による感染への対抗準備を助けることで、重症化を防ぐことができます。
アメリカで利用できる3種類のCOVID-19ワクチン全てが、コロナウイルスであるSARS-CoV-2の持つスパイク蛋白と呼ばれるものに関連して作られています。SARS-CoV-2ウイルスは球形のウイルスで、全体がコブで覆われていて、まるで野球ボールにゴルフで使うティーが大量に突き刺さっているようです。このコブがスパイク蛋白です。
コロナウイルスは、スパイク蛋白によって細胞内へと侵入することができ、それにより、大量のウイルスコピーが作られます。つまり、ヒトの細胞、特に肺にある細胞の表面にある受容体と呼ばれるある種のタンパク質にスパイクタンパク質はくっつきます。くっつくことで、ウイルスは健康な細胞の内部に侵入して感染するのです。
ファイザー・バイオNテックとモデルナ、ジョンソン&ジョンソンのワクチンはすべて同じように働くのですが、いずれも、ヒトの体にスパイク蛋白の作り方を教えてつくらせます。ファイザーとモデルナのワクチンは、この作り方の指示書としてmRNAと呼ばれる分子を使っています。この一本鎖の分子は、一片の長いテープのようなもので、片面にタンパク質の作り方が暗号として書かれています。
一方、ジョンソン&ジョンソンのワクチンは細胞に指示を出すためにDNA分子を使います。また、同時にアデノウイルスと呼ばれるウイルスも使っていますが、ウイルスとはいっても自分のコピーは作らず、ヒトの細胞内部にスパイク蛋白のDNAを侵入させます。このDNAから、mRNAがコピーとして作られ、タンパク質(この場合はコロナウイルスのスパイク蛋白)を作る指示へと変換されます。
そのため、この3つのワクチンの大きな違いは、ファイザーとモデルナのワクチンが、スパイク蛋白の作り方の指示書としてmRNAを使い、ジョンソン&ジョンソンのワクチンはDNAを使うということです。その他は、3つのワクチンは全く同じように働きます。
ワクチンが体内に入ると何が起こるの?
DOVID-19ワクチンが体内に注射されると、そのmRNAやDNAは組織の細胞、あるいは、筋肉や皮膚、器官に生息する、樹状細胞と呼ばれる特別な免疫細胞に取り込まれます。樹状細胞は体の各所で、コロナウイルスのように侵入してくる病原体のサインを、歩哨のように監視しています。
DNAやmRNAが樹状細胞や組織細胞に取り込まれると、すぐに、これらの細胞はその指示通りにスパイク蛋白を作ります。この過程は通常ながくて12時間かかります。スパイク蛋白が作られ、免疫系へと提示される準備が終わると、mRNAやDNAは細胞によって破壊され排除されます。
細胞が自らスパイク蛋白を作るとはいっても、完全なウイルスのコピーを作れるだけの十分な情報はもっていないということは知っておかねばなりません。しかし、スパイク蛋白だけでも体の免疫系が防御力を上げるきっかけにはなるので、もし、完全なコロナウイルスが侵入してきても、準備は整っているのです。
組織細胞や樹状細胞がスパイク蛋白を歓迎されない客として認識すれば、細胞はスパイク蛋白の破片を外へ提示して、他の細胞から見えるようにします。樹状細胞は同時に危険信号を放出し、他の細胞はこのスパイク蛋白が脅威となっていることを知るのです。この危険信号は、黄色いネオンサインが点滅しているようなもので、スパイク蛋白を指して、「これは仲間じゃない」と警告します。
そして、これらの危険信号は、体の免疫反応を高めるのです。
免疫系が高まると何が起こるの?
こういった過程のおかげで、体は現在緊急警報が鳴り響き、侵入者と戦うために学ぶ準備ができています。今回の場合、COVID-19ワクチンが注射された後で、スパイク蛋白が作られたという状況です。
B細胞やT細胞と呼ばれる体内の免疫細胞は、外部からの侵入者の警報を識別できます。数千ものこれらの細胞は、その場所へと駆けつけ、新たな脅威について学習し、そうやって、防御力を生み出す助けをします。
B細胞は抗体と呼ばれる罠を生産する専門家です。抗体は侵入してきた同種のスパイク蛋白は何であれ、取り押さえるでしょう。異なるB細胞は、それぞれウイルスやバクテリアの別々の場所を識別して、それに応じた抗体をたくさん生み出します。そして、B細胞は工場のように働き、感知された脅威に対抗する抗体を脅威が去った後も作り続け、長い間その脅威に対する抵抗力が続くようにします。
T細胞の一種は、ヘルパーTと呼ばれますが、危険信号が提示された時にB細胞が抗体を作るのを助けます。他のT細胞には、体の他の細胞がウイルスに感染したのかどうかをチェックする働きがあるものもあります。もし、この種類のT細胞が、感染した細胞を見つけた場合、その感染した細胞を排除することで、さらなるウイルスのコピーが作られることを防ぎ、被害の拡大を抑えます。
なぜ腕が痛くなるの?
こういった重要な過程が体内で起こるので、皮膚の下で起こっているこういった現象に対する身体的なサインが目に見える形でおきるかもしれません。ワクチン接種後の腕が腫れた場合、それは樹状細胞、T細胞そしてB細胞のような免疫細胞が脅威を見つけに腕に殺到しているからでしょう。
また、熱や他の病気の症状として現れるサインが出てくるかもしれません。こういったことは、あなたの体が期待されたことをきちんとやっていることを意味します。それらは、身体がスパイク蛋白とどのように戦うのかを学習しているときに起こる、安全で自然な成り行きなのです。このようにして、もしあなたが本物のコロナウイルスと接触したときに、その驚異からあなたを守る方法をあなたの体は学んでいるのです。
参考記事: The Conversation
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