マッチを箱についた赤い面でこすると火が着きます。ですが、よく考えると不思議です。どうしてこするだけで火が着くのでしょうか?実は、火が着くのは単独の化学反応ではなく、複数の反応が連続して起こる連携プレーによって起こっているのです。
熱を起こす摩擦
なぜマッチに火が着くのかを知るために、まずは「摩擦(まさつ)」と呼ばれるものを理解する必要があります。摩擦は、2つの物体をこすり合わせることでおこり、熱を生み出します。これを「摩擦熱(まさつねつ)」と呼びます。寒い朝に手を暖めるためにこすり合わせたことはありませんか?それが摩擦です。摩擦は運動エネルギーを熱エネルギーに変換するのです。
マッチに火をつける際の最初の重要なステップが摩擦です。マッチに火をつける時、マッチ箱の横の赤いザラザラし面にマッチの頭をこすりつけるでしょう。
この赤いザラザラした面には、小さなガラスの粉が含まれていてザラザラを強くすることで摩擦力を高めています。マッチの頭もザラザラしているので、この2つのザラザラによって摩擦熱が生まれます。そこで生まれる摩擦熱は、次の化学反応を引き起こすのに十分な熱さがあります。
化学反応
化学反応という言葉は知ってると思います。ある化学物質が他の化学物質と相互作用して変化することです。お酢に重曹を混ぜると、泡が出てきて小さな噴火ともいうべき反応がおきます。それが化学反応です。熱は化学反応のきっかけを生み、反応速度を高めます。
マッチに火をつける化学反応は一つではありません。驚くことに、最初の化学反応が起こるのはマッチの頭ではなく、箱の方でです。
その化学物質の名前は「赤リン」です。見た目は赤い粉なのですが、拡大して原子の並びを見ると、テトラポットの形のものと、長い鎖状のものが混ざっています。
箱でマッチをこすると、摩擦が起こって熱が生み出されます。熱によって赤リンの鎖状のものが壊れてばらばらになります。すると、赤リンは別の化学物質である「白リン」に変わります。白リンは、すぐに空気中の酸素と反応します。するともっと多くの熱が生み出されるのです。
今までの話をまとめると、摩擦が赤リンの鎖を壊すことで、白リンとなって酸素と反応をおこし、マッチは熱くなるのです。
話にはまだ続きがあります。
燃料+熱+酸素=火
火が起きるには3つの材料がいります。燃料、熱、そして酸素です。
摩擦熱と白リンの反応が最初の熱を生み出します。そこで、マッチが燃え続けるのに必要なのは残りの燃料と酸素です。
燃料はマッチの頭にある硫黄とロウです。そしてマッチ棒の木も燃料になります。
酸素を提供しているのは空気だけではありません。マッチには秘密の供給源があります。マッチの頭には、別の化学物質である、「塩素酸カリウム」が含まれています。塩素酸カリウムが暖められると、多くの酸素と熱を放出します。これによってマッチは速やかに激しく燃え上がります。
これで、火が出る条件は整いました。熱と燃料、そして酸素が生み出されることで炎ができます。驚いたことに、ここまでの化学反応の連鎖はほんの1秒のうちに起こるのです。
どこでも着くマッチ
今まで説明してきたのは、おそらくは誰の家にでもある「安全マッチ」の話です。
しかし、古い西部劇やアメリカのアニメで見られる、ブーツの底や柱、その他のマッチ箱のでは無いものでこすって火がつくマッチというものもあり、「Strike Anywhere Match(どこでこすっても着くマッチ)」と呼ばれています。
その仕組みは安全マッチと似ています。違いは、リンがマッチの頭についているところです。リンの種類も異なっていて比較的低温でも発火します。そのため、大変危険です。
マッチは簡単で安全に火をつけられるように工夫された発明品です。複数の化学反応が連鎖して火が着きます。ただ、安全とは言っても、危険な火を使うことにかわりありません。マッチの取扱には十分気をつけるようにしましょう。
参考記事: The Conversation
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