自ら進化するRNAが作られる。生命誕生の要因かも?

水滴 化学

地球上の生命の誕生はRNAから始まったとするさらなる証拠が、日本の研究からもたらされました。自発的に複製、多様化、複雑化をもたらすRNAが作られたのです。

地球に最初の原始的な細胞が現れるずっと前に、それは深淵の際に溜まった有機物のスープと混ざり合っていました。

複雑な化学反応と生物の進化の間にある境界は、生物学の領域が始まる瞬間です。残念なことに、その重要性にも関わらず、生物が生まれた瞬間について、わかっていることはごくわずかしかありません。

東京大学の研究者たちが執り行った実験によって、何十億年も前に生命が生まれたのが、RNAの特別な能力によるものだとする見方が強められました。これは、「RNAワールド」と呼ばれる仮説を裏付けるものです。

しかし、研究はまた、生命の誕生が私達の考えていたのとは異なった方法だったことをも示唆しています。

現在でも生命の生存や繁殖に重要な役割を果たしているRNAが、チームとなって働くことで進化系を生み出す方向へ一歩進んだことを研究は示しています。

「私達は、単一のRNA種が進化して複雑な複製システムとなることを発見しました。それは、多様な相互作用を持つ5種類のRNAからなる複製ネットワークシステムで、長らく構想されていた、進化移行シナリオの妥当性をサポートします。」と、東京大学の水内良特任助教授は述べています。

基本部分にまで立ち返ると、生命は自分自身の不完全なコピーを作れる分子からできていて、実質的には際限のない変異種の集団を作り出し、それらを十分な時間保持するかあるいは保持しないことで、自らのコピーを生み出します。

生命の起源を探索することは、実質的には、そういった複製を、高度に特殊化した有機物質、例えばDNAやタンパク質などの助けを借りずに、成し遂げられるような候補物質を調べることです。

核酸

Photo by Warren Umoh on Unsplash

RNAはその探索の中で、常に第一線で有り続けています。RNAは、現在も自然界全体にありふれており、太古の地球でも、生物に頼ることなく生み出され存在していた可能性があり、大量の情報を保存することができる上に、物質としても動的に活動できます。

つまり、RNAは、新たな構造を持つことのできる新たな分子を、物理的に組たてるための構造をとれる可能性があるということです。そのプロセスが不完全なら、その「複製」構造のいくつかは、その仕事を他の構造よりも早く効率的に行うことになり、その構造を持つRNAは数の上でも優勢になります。少なくとも、より効率的なものが現れるまでは。

この考えと同じくらい魅力的なのは、何十年も前から知られている、自己組織化する個別RNA分子の単位で、これはそういったシナリオにとっては、単純すぎで、似つかわしく有りません。RNAの兄弟であるDNAでも、自然淘汰の急成長が始まるだけに必要な長さ持ちこたえるだけの持久力がありません。

これはつまり、多重鎖がチームとして働くことが、その仕事を変わりに成し遂げられないということではありません。たくさんの異なる複製子を持つことで個体数を増やすことが、ただ単純に、この情報に関わる問題を簡単に解けるというだけです。

様々な複製子は、RNA、DNA、タンパク質について設計されていて、それが実現可能であることは示されたかもしれません。研究者たちは、分子構造が協力して最適な速度で複製できるような機能を組み立てるために長い時間を費やしています。

それらは複製を持続できる一方で、どれも今の所、時間とともに複雑化するということはありません。そこで、RNAには進化する能力があるのかという問いにつながるのです。

水内氏のチームは、情報を保持した上で時間とともに変化するだけでなく、それを続く世代ではもっと複雑な解決法で行うように、個別の複製子分子をRNAでデザインすることに成功しました。

研究では、クローン化された長さのRNAを水滴の中でオイルと懸濁して100サイクルの複製をし、それぞれのサイクルにおいて、試験と分析が行われました。

「正直なところ、最初はこのように多様なRNAが進化して共存するなどありえないと思っていました。進化生物学では、競争排除則が、同じ資源をめぐって競争する場合、共存できず1種類しか残らないとしています。つまり、分子は多様性を維持するために、異なる資源を使う方法を次から次へと生み出す必要があります。これらは単なる分子であり、非生物の化学物質が自然発生的にこのような躍進を遂げられたのが不思議でなりません。」

この概念実証実験は、RNAが資源をめぐって競争せず、ある種の宿主と寄生者の様式でそれぞれを頼っている限りにおいて、それは可能であることを示しました。もしRNA複製子が1つでも取り除かれれば、他のものも絶滅します。

「RNAワールド仮説」がもっともらしいと云うことがより強固になりましたが、どのように数十億年前に地球に生命が開花したのかを示すには足りません。地学から天体物理学までの多様な証拠が必要となるでしょう。

それでも、原始スープを多様な生物へと変化させ現在の複雑性にまでつなげた進化の化学モデルの探索においては強固な一歩です。

研究は「Nature Communications」で発表されています。

参考記事: Science Alert

コメント