人類が生き延びるために、他の生物種が必要というのは本当?

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人類は他の生物種なしで、生き延びることは絶対にできません。

生態学によると、それには少なくとも3つの理由があります。

食糧を生産するには他の生物種が必要

食べ物

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まず、他の生物種がいなければ、人は食べるものが無くなってしまいます。

人や全ての動物は、エネルギーにしたり、体を形成する材料にしたり、生殖するために、食べ物が必要となります。いくつかの微生物や植物だけが、太陽光、水、二酸化炭素からそういった食べ物を生み出す基本的な分子を作ってエネルギーを生み出す手段を持っています。この仕組みは光合成と呼ばれています。

こういった生物がいなければ、人には食べるものが無くなってしまいます。私たちの食べているものは、植物や光合成をする生物、それを食べる動物、動物を食べる動物のどれかに該当します。

加工食品は、微生物や植物、動物などからできていないように見えますが、ほとんど全てが、いきものからきています。ビタミンや食品の材料の中には、工場で作られるものもありますが、人の食料の中での比重はとても低くなっています。

化学者たちは、様々なエネルギー源を使って、食べ物として使える化合物を作る方法をいくつか見つけています。そのような方法で作られたものは、合成食品と呼ばれています。しかし、こういった製法は難しく、高価であるため、こういった合成食品で人々を養うことは今の所不可能です。

遺伝学的に改造された細菌や培養細胞を使った、合成食品の生産は、重要さが増してきています。将来、人の食事は植物や動物を消費する度合いが減るようになるかもしれません。しかし、人間の食糧の中心となるのは、生きた生物であり続けるでしょう。

大、小、極小の数えきれないほどの異なる生物種が様々な目的で必要です。健康な土壌や、呼吸できる空気の生成、廃棄物の分解や再利用のため、水の浄化や腐敗の防止、有害物質を無害な物質へと分解、化学物質を他の生物の成長や繁栄に必要な栄養素へと転換することなどがその目的です。

1,200種を超える私たちの食糧となる植物には、食べられる果実や種子を作るために花粉媒介者が必要です。植物の生殖に必要な過程が受粉ですが、動物が花粉を花から花へと運びます。主要な花粉媒介者はミツバチですが、他にも多くの虫や、鳥、コウモリや動物も花粉を植物間で運びます。

小さなアリから巨大な象まで、あらゆる大きさの動物が、健康で生産的な生態系に必要な、植生の拡大をもたらす種の移動を行なっています。小さな微生物から、巨大なハゲタカやサメといった、幅広い種が、生物の死骸を分解して有用な化学物質にして、さらなる食糧の成長に役立たせています。

通常の食事、一口のために、貢献している生物種の数は、驚くほど多いのです。

健康でいるために、人間の体は他の生物種を必要としている

人間の多くの身体機能それ自体も、微生物種からなる複雑で極度に多様性のある生態系に頼っています。それらは、皮ふや呼吸器官、消化器官、生殖器官などに潜んでいます。こういった、細菌や菌類、他の微生物をマイクロバイオームと呼びます。

人々はそれぞれで、固有のマイクロバイオームを持っていて、感染症に抵抗したり、食物中の栄養分を分解、抽出したり、ビタミンを合成したりしています。

例えば、腸のマイクロバイオームは、食物を分解して利用可能なエネルギーや栄養素にしたり、分解できないものや有害な物質を排出できるような物質に転換したりするのに重要な働きを持っています。

こういったマイクロバイオームは、食べたもの、周りの環境、どこに住んでいてどれだけ健康か、といった要素を元にして、人の寿命を変化させます。実際、人の体は細胞数よりも多くの細菌からできているのです。

食べたものや薬は、健康な腸の生態系で中心となっている300から500の細菌に大きく影響します。

マイクロバイオームはまた、感染症に対する抵抗力にも重要な役割を持っています。多くの病気は、たった数種類の種が占めるようになったマイクロバイオームと関連があります。医師の中には患者に健康な人の排泄物を移植することで、マイクロバイオームを健康にし、病気を治そうとしている人もいます。

人間は他の生物種に囲まれていた方が幸せ

happy in nature

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最後に、研究によると、人はいろんな種類の植物や動物に囲まれている時に、より健康で幸せになることが示されています。人々には、心身の健康のために、他の生物の姿、音、匂い、肌触り、味、といった経験が必要なのです。こういった要因は、「バイオフィリア」と呼ばれていて、生き物を愛するという意味があります。

例えば、鳥を見たり鳴き声を聞いたりすると、積極的な感情がわきます。カナダやドイツでの2つの研究では、近所に多くの種の鳥が生息するほど、住民は幸せになることが示されています。これは、鳥に遭遇する経験そのものだけでなく、鳥が生息できる健康的な環境にもよるのかもしれません。

他のカナダの研究では、研究者たちは、ハイキングコースに隠してあるスピーカーから鳥のさえずりを流しました。すると参加者たちは、少ない種類や全くさえずりがなかった場合と比べて、種類の豊富なさえずりを聞いた場合に、よりリフレッシュしたり満足感を感じたりしていました。

現在、世界人口の半分以上が、田舎ではなく都市に生活しています。なので、都市計画者や景観建築者たちは、都市にもっと多くの緑の広場や、緑のある施設を建設する方法を探索しています。

研究はまた、都市が多様な野生生物や、開けた緑地や植生の拡大が建物や通り沿いで見られる時、人々はより活動的で、ストレスが少なく、健康で幸せになることを示しています。これらの環境は、人々が他の生物と関わり合う経験を与えるだけでなく、植物、動物、微生物そのものが、環境を健康で喜ばしいものにするためにやっていることからも利点があります。

科学者たちによると、人間の命を支えるには、数千の生物種が必要です。しかし、やっと異なる生物種が、都市を含んだ生態系で担っている重要な役割がわかり始めた段階です。なぜ、どうして、ほかの生物種が人類存続に必要なのか、知るためにはもっと学ばなければなりません。そして、もし人類が、宇宙へと長い旅に出かけることに成功したり、スペースコロニーを設立した場合に、人類が生き延びて栄えるためには、どの種を連れて行けばいいのか、理解する必要が出てくるでしょう。

参考記事: The Conversation

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