人間と猿の違い!体内の水分を効率的に保持できる能力をヒトは持っている

人類進化 生物学

人間が他の動物よりも優れた点といえば、大きな脳により複雑な情報処理ができることや二足歩行により自由になった器用な手などですが、今回、チンパンジーや他の類人猿と私達を分かつ新たな能力が見つかりました。

体内の水分を有効活用できる能力です

この結論が得られたのは、人間の体が日々の中でどれだけの水分を失い、それを補充しているのかを、今回始めて正確に測り、他の類人猿と比較したからです。

私達の体からは絶えず水分が失われています。

私達は汗をかき、トイレに行き、息をすることで、水分を失っているのです。

私達は、血液や他の体液を維持するために、水分を補給する必要があります。

しかし、今回「Current Biology」で発表された研究によると、他の類人猿と比べた場合、一日に必要とされる水分の量が、30-50%も少なくてすむというのです。

この、水分を保持できる能力を獲得した私達の祖先は、小川や井戸といった水場から遠く離れた場所まで、獲物を探しに行けるように進化したのだろうと、論文の著者であるデューク大学の研究者は述べています。

初期の人類は乾燥したサバンナで生活していたと考えられるため、この能力は大きな長所だったことでしょう。

実験では、農業従事者から狩猟採集者、オフィスワーカーまで様々な生活様式を持った309人と、動物園や保護区に住む72匹の類人猿が対象となりました。

ヒトや動物が、水分を保持する仕組みは、風呂桶のお湯の様子に似ています。

バスタブ

Mikes-PhotographyによるPixabayからの画像

出ていく水の量と、流入する水の量がちょうど釣り合っているのです。

例えば汗をかいて、水分を失うと喉が渇き、水分を補給することになります。

逆に、水分を必要以上に取りすぎた場合は、腎臓が余分な水分を取り除きます。

実験では取り入れた水分は、食べたものや飲んだものから計算し、出ていった水分は、汗や尿、排泄物から計算しています。

入ってきた水分と出ていった水分をすべて計算した結果、標準的なヒトの場合、一日に処理されている水分の量が、コップ12杯に相当する3リットルであることがわかりました

動物園のチンパンジーやゴリラは、その2倍以上を必要としていました。

研究者たちは、この結果にとても驚きました。

というのも、霊長類の中でもヒトは汗を利用することに長けているからです。

同じ面積で比べると、ヒトの汗腺の数はチンパンジーの汗腺の数のおよそ10倍あります。

私達が、一時間のエクササイズをした際に流す汗の量は、約1.9リットルにもなり、大型のペットボトル一本に匹敵します。

さらに驚くことに、チンパンジーやボノボ、ゴリラやオランウータンといった類人猿の生活は、とてものんびりしているという事実もあります。

多くの類人猿は、10から12時間を休息や食事に費やしており、10時間は寝ています。

なので活発に活動しているのは、2時間程度でしかありません。

そこで、水分量に影響してくる、天候や体の大きさ、活動レベルや一日に消費するカロリーなどを、計算で調整しました。

その結果、やはりヒトが水分の消費を抑える能力は本物であり、個人がどこに住み、活発に動いているかどうかに関わらず存在することが明らかになりました。

ヒトは進化の過程で、日々の必要水分量を抑えた上で健康でいられるように、何らかの変化を起こしたと考えられます。

研究の次の目標は、身体的に何が原因でこの特徴が生まれているのかを突き止めることです。

まだ仮説でしかありませんが、その一つは、カロリーあたりに必要とする水分がそもそも他の類人猿に比べて少ないというものです。

ヒトは赤ちゃんの段階ですでに少ない水分量で生きています。というのも、人間の母乳中の水分のカロリーと比較した割合は、他の類人猿よりも25%少ないからです。

もう一つの仮説は、私達の顔に関係するものです。

私達の祖先であるホモ・エレクトスの段階から、私達の鼻は突出してきています。

この大きな鼻腔が、吐き出す息に含まれる水蒸気を冷やして凝宿させて、液体に戻し、水分として再吸収しているのです。

 

参考記事: Phys.Org

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