現在、系外惑星の地球外生物を見つけるために、行われている方法は、地表あるいは地下に存在する液体の水を探すこと、そして、大気中に一定量の酸素が含まれていないかを調べることです。しかし、“Science Advances”で発表された新たな論文では、それとは異なる生命の痕跡を大気組成に求めることができると発表されています。研究を行ったのは、ワシントン大学の研究者チームです。
Disequilibrium biosignatures over Earth history and implications for detecting exoplanet life
生命を示す大気
太陽系の外で見つかる系外惑星は、トランジット法で見つかった惑星の場合、惑星の大気を主星からの光が通過することによって、大気組成を調べることが原理上できます。そのためには、もちろん高解像度の望遠鏡が必要となります。
惑星の大気に酸素を探す方法は、非常に効果が高いです。というのも、生物が存在しない惑星に酸素が豊富に存在するということは、あまり考えられないからです。しかし、酸素を生み出す仕組みは、かなり複雑であるため、進化の過程で酸素の合成能力を手にするというのは、宇宙に生物がいるとしても、その中でも例外的である可能性があります。
酸素によらない生命痕跡を探すために、研究者たちは地球の歴史をひも解きました。そして、生物の存在なしには考えられない初期の地球の大気組成を特定したのです。これは、他の惑星で生命の痕跡を探すための指標にできます。
その痕跡とは、液体の水が存在する惑星で、「豊富なメタンと二酸化炭素を含み一酸化炭素を含まない大気組成をもつ」というものです。
新たなサインで探索範囲が広がる
研究によると、メタンが大気中に生じる方法は沢山あります。小惑星の衝突や、岩石と水の反応、地球内部からの放出といったものです。しかし、メタンの量が豊富になることは、生物が存在しない場合極めて起こりにくいと言います。
また、二酸化炭素とメタンの中にある炭素原子は、全く両極端の状態になっています。二酸化炭素は「酸化」しており、メタンは「還元」しています。こういった両極端なものが同時に存在し、その中間である一酸化炭素が存在しないという状態は、生物の存在なしでは考えにくいのです。
火山活動では、二酸化炭素とメタンが同時に放出されますが、その中間の一酸化炭素も放出されます。
また、生物活動のある惑星では、一酸化炭素はすぐに消滅します。一酸化炭素は微生物によって食べられてしまうのです。なので、一酸化炭素が大気に豊富に含まれている場合、生命の可能性は低いと考えるべきでしょう。
この生命痕跡で見つかるのは、メタン生産生物です。メタンの生成は簡単な代謝系で行えるため、生物界にはあふれています。地球の歴史上でも、古くまでさかのぼってみることのできる性質です。そのため、酸素を生み出す生物よりももっと一般的な生物の形であると言えます。
この指標を使うことで、地球外生命発見の可能性は上がるでしょう。今後、運用開始予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のような高性能望遠鏡で系外惑星の大気組成が調べられるようになるでしょう。その時まず、メタンや二酸化炭素の豊富さを調べることで生命が発見されることを研究者たちは期待しています。
生命を発見するために、その惑星までプローブを飛ばす必要は無いのです。現存する技術によって、生命が発見できる。それが、この研究の素敵なところです。近い将来に、地球外生命発見のニュースがこの研究によってもたらされるかもしれません。期待して待ちましょう!
参考記事: Universal-Sci
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