映画や漫画ではよく見かけるタイムトラベルですが、技術が進んだとして実際に可能になるのでしょうか?答えは、残念ながら難しそうです。
まず、タイムトラベルには2種類あります。
時間をさかのぼるタイムトラベルと、時間をすすめるタイムトラベルです。
過去へのタイムトラベル
現在わかっている範囲から言えば、過去へさかのぼるタイムトラベルは不可能です。
『シュタインズゲート』の電話レンジのように、情報だけ過去に送るということさえも、難しいです。
というのも、すでに起こってしまったことを変えてしまう可能性があり、それは不可能に違いないからです。
ウンテイで遊んでいるときに落下して、腕を折ってしまったとします。
もし、タイムトラベルで時間を逆行して、自分にウンテイで遊ばないように忠告できたとしたら、あなたは腕を折ることはないでしょう。
しかし、そうすると、あなたにはタイムトラベルをする必要がなくなってしまいます。
では、あなたの腕は折れていることになるのでしょうか、それとも折れていないのでしょうか。
考えると頭が痛くなりますが、そう考えているのはあなただけではありません。
タイムトラベルは、多くの人を混乱させてしまうような概念なのです。
というのも、私達が時間を考えるときに、それは直線状に進んでいると考えるためで、ある出来事が起こったあとに次の出来事が起こると考えるからです。
もし、時間をさかのぼって、すでに起こってしまったことを変えられるとすると、この直線の並びを変えてしまうことになります。
それは、「因果律」と呼ばれる法則を破ってしまうことを意味しています。
因果律では、原因が起こったあとに、結果がもたらされるとします。
ウンテイの例でいえば、ウンテイから落ちたことが原因であり、腕を折るのがその結果です。
ウンテイから落ちたから腕を折ってしまったのです。
因果律は破ることのできない宇宙の法則の中の一つです。
もし因果律を破れるとすれば、それは宇宙にとっても私達にとっても好ましくない結果をもたらすでしょう。
専門家は、宇宙が因果律を持つことが過去へのタイムトラベルが不可能である理由であると考えています。
過去へのタイムトラベルが可能であるとすれば、いつどこでもこの因果律が破られうるということになるからです。
未来へのタイムトラベル
過去へのタイムトラベルが不可能であるとするなら、未来へのタイムトラベルも不可能なのでしょうか?
厳密に言えば、私達はみな、すでに未来へとタイムトラベルしていると言えます。
というのも、時間は未来へと進んでいるからです。
毎秒ごとに私達は、一秒先の未来へと進んでいるのです。
でも、みんなが同じように進んでいるとするなら、それはタイムトラベルとは言えませんよね。
信じられないかもしれませんが、二人の人物の間で、時間に対する感じ方に違いが生じることがあります。
速いスピードで動いている人の時間は、静止している人と比べたときに異なった流れ方をします。
相対性理論から導き出される、「時間の遅れ」が生じるのです。
東京からニューヨークまで飛行機で飛んでいる人は、到着を待っている人よりも、時間の流れを速く感じるはずです。
つまり、飛行機の外の世界は未来へと進んでいるのです。
でも、普通それには気づきません。
それは、気づくほどの時間の遅れを実感するためには、飛行機よりももっとずっと速いスピードが必要となるからです。
もし、世界を一周回ったとしても、家でじっとしていた人との間には、約10億分の1秒の違いしか生じません。
この小さな違いを確認できるのは、科学者たちが厳密な実験を行って実際に測った場合のみです。
この小さな違いを実際のタイムトラベルに用いようとしても、役に立たないでしょう。
もし、4百万年の間世界を回り続けたとしても、地上にとどまっている人との感じ方の違いは、たった1秒にすぎません。
どれだけ速くすすめるか?
では、問題がスピードにあるとするなら、もっと速く飛べばいいということになりますよね。
十分な速さで、十分な距離を進むことができれば、人類の未来を100年ぐらい飛び越えることも可能になり、未来へとタイムトラベルしたことになるはずです。
残念ながら、それが可能となる速さというのは、光の速度レベルです。
光の速度は、世の中で最も速い、速さの限界でもあります。
光の速度は時速約10億キロメートルで、とても速いです。
現在人類が作った最も速い人工物は、NASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」です。
秒速200kmと高速なのですが、光の速度の0.064%に過ぎません。
つまり、未来へのタイムトラベルを実現するには、まだ長い道のりが必要ということです。
過去を目撃する
私達はタイムトラベルできません。
しかし、過去を観察することは可能です。夜空を見上げればいいのです。
光の速度は一定で、非常に速いです。
しかし、宇宙に広がる天体間の距離はとても離れていて、光でさえもその間を旅するには時間がかかります。
太陽からふりそそぐ光は、私達の目に到着した時点ですでに放射されてから8分20秒もたっています。
つまり、わたしたちは8分20秒だけ過去の太陽を見ていることになるのです。(注意!太陽を直接見ると失明の恐れがあります。絶対にやめてください。)
私達の天の川銀河から一番近い銀河は、おおいぬ座矮小銀河で、25,000後年の距離にあります。
つまり、光の速度ですすんでも到達するには25,000年かかるということです。
私達が望遠鏡を使ってこの銀河を見るとき、それは25,000年前の姿を見ていることになります。
私達はタイムトラベルできないのですが、夜空を見上げるたびに、過去を目撃することはできるのです。
参考記事: The Conversation
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