宇宙は将来どのように終わるのでしょうか?永遠に膨張し続けるのでしょうか?それとも途中で反転して縮みはじめ、ビッククランチとして一点に収束して終わるのでしょうか?
1世紀前には、銀河が存在していることすらわかっていませんでした。
1910年代に、天文学者が宇宙に浮かぶ渦状星雲との距離を測る方法を見つけました。
それは近くにある雲状のガスに見えていたのですが、実際には非常に遠くにある何十億もの星を含んだ一つの銀河であることがわかったのです。
銀河が何であるのかわかるとすぐに、それぞれの銀河が互いに離れて行っていることを発見しました。
遠くにある銀河ほどそのスピードが速かったことから、宇宙が膨張していることがわかったのです。
この発見以来、宇宙が永遠に膨張するのか、それともビッククランチ(すべての物質が一点に収束する宇宙の終わり)としていつか崩壊するのかという疑問が生まれました。
この問題が難しいのは、重力が膨張速度を減速させないとおかしいと考えられるからです。
すべての物質を引き寄せる力「重力」
すべての銀河は、地球が私達を引き寄せているのと同じ力で、それぞれ引き合っています。
重力は距離に反比例して弱くはなるのですが、無限遠まで届く力です。
なので、すべての物質の間には引き合う力が存在しているといえます。
しかし、その力を振り切れるほどのスピードで動いていれば、落ちることなく飛んでいくことができます。
例えば、ボールを空に投げると、最初は勢いよく飛んでいきますが、どんどん減速して最後は落ちてきます。
しかし、もしボールを秒速11キロメートルという超豪速球で投げたとすると、再び地球に落ちてくることはありません。
このスピードのことを第2宇宙速度、あるいは脱出速度と呼びます。
地球による重力が引き戻せないほどの強さを持ったスピードです。
もし月から脱出することを考えると、もっと楽に脱出することができます。
月は地球よりも小さく質量が100分の1しかないので、かかる重力も小さくなるからです。
月の重力を脱出するには、ボールを秒速2キロメートルで投げれば十分でしょう。
こういった重力と脱出速度を考慮に入れると、質問は次のように変わります。
すべての銀河を合わせた重さはどれくらいか?
互いが離れていけるほどの脱出速度を持っているか?
もし脱出速度に達していれば永久に膨張することになります。
ダークエネルギーがもたらす奇妙な加速
1990年代になってやっと、その答えが出せるまで測定が正確になりました。
そして、その答えは驚くべきものだったのです。
天文学者たちが膨張の変化を調べた結果、重力による減速はまったくないことがわかりました。
それどころか、膨張スピードはさらに加速していたのです。
これは、かなりおかしなことで、重力が逆方向に働いているとでも考えるしかありません。
何かが銀河同士を引き離そうと押しているのです。
まるで、空中へ軽く投げたボールが宇宙に向かってどんどん加速していくようなおかしさです。
この加速が何によってもたらされているのかはわかりません。
この加速に使われている未知のエネルギーのことを、ダークエネルギーと呼びます。
ダークエネルギーがいったい何であるのか、科学者たちにもわかっていません。
しかし、最初の質問には答えることができます。
寒くて暗い宇宙の終わり
つまり、宇宙は永遠に膨張していき、最後には「ビッククランチ」ではなく「ビックフリーズ」を経験するというのが答えです。
すべての銀河は互いにどんどん離れていき、宇宙はどんどん冷えていって最終的にはどの銀河も私達の銀河からは離れて霞んでゆき、最後には全く見えなくなるでしょう。
光さえも届かないほど離れてしまうのです。
さらには、膨張速度が加速しすぎて銀河を引き裂いてしまう可能性もあります。
その時は、原子さえも引き裂かれ、全てが破壊されてしまうでしょう。
このシナリオは「ビッグリップ」と呼ばれています。
一番可能性が高いシナリオは、私達はビッグフリーズに向かっているというものです。
宇宙は将来、非常に長い時間存在し続けるけれども、そこは冷たく暗い場所となっていることでしょう。
参考記事: The Conversation
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