新型コロナウイルスも、致命的なエボラウイルスもコウモリから人間にうつったことが知られています。実は、コウモリが多くの病気を人間にうつす理由は、コウモリ特有の性質や、進化の仕方と関係しているのです。
コウモリは、エボラウイルスや狂犬病ウイルス、コロナウイルスなど様々なウイルスを、他の動物よりも多く持つ傾向にあるだけでなく、より多く人間に移す傾向もあります。
飛行能力と、病気に対する防御
コウモリは哺乳類で唯一、自由に飛行でき、多くの生物的特性が飛行に関するものです。飛ぶためには多くのエネルギーを必要としますが、そのため、コウモリは質の高い食べ物を食べます。葉っぱのような食べ物は、エネルギーが少ないので、多くのコウモリにとって十分では有りません。コウモリは通常、糖分やタンパク質が豊富な餌を好みます。それは、果物や花粉、昆虫、クモ、小動物や血液といったものです。
コウモリのエネルギーのほとんどが、翼を動かす動力として必要で、体内の他の機能は非常に効率的になるように進化してきました。とりわけその例として適切なのが、免疫系です。科学者たちは、人間にとっては重篤で致命的な病気にかかったコウモリが、病気の兆候を何も示さないのを何度も目撃しています。
人間の体は、病気から回復するために、一生懸命戦い、その過程で病気の症状が出るのですが、コウモリの体は戦わずにただ耐えるのです。つまり、病原体に感染したときでも、健康な状態を保って、飛んだり食べたりできるのです。
事実、コウモリの体は、病気への耐性がとても高いので、私達よりも多くの病気を持つ傾向にあります。つまり、健康に見えるコウモリが実は何種類かの病原体を運んでいることがあるのです。
社会性が有り長生きするコウモリ
多くのコウモリは、大きな社会的集団を作って生活し、互いに密なやり取りをします。彼らは、他のグループメンバーの世話をし、例えば、吸血コウモリは、餌を見つけられなかった友達に、吐き戻した餌を与えます。また、コウモリは他の同じ大きさの哺乳類よりも、平均的に長生きです。大きさは寿命と相関し、大きな動物というのは通常、ゆっくりと長く生きます。
コウモリが病気によく耐えることを考えると、社会性があるということは、典型的なコウモリ集団の中のコウモリは、互いに多くの病気を受け渡しやすいということで、その過程で死ぬこともなさそうだということがわかるでしょう。
つまり、典型的なコウモリの集団は、病気の温床になります。さらに、コウモリに感染する病気は、新たな病原体へと突然変異する可能性も高くなります。コウモリの免疫系は、病気からコウモリを守っているので、複数の病気がコウモリの暖かくて住心地の良い体内で、何ヶ月から何年も生息することになり、そのため進化するために十分な時間が与えられることになります。これらのことが、コウモリが新しい病気の重要な発生源となると同時に、古い病気の受け渡し場になる理由です。
飛ぶことで、私達に近づくコウモリ
コウモリは世界中で見られ、1,200種類以上もの多くの種がいます。コウモリは遠くまで飛ぶことができることもあって、私達がコウモリから遠く離れて生活することはできません。
世界のある地域では、コウモリを直接触らない限り、心配する必要はありません。例えば、昆虫を食べる種類のコウモリは、人間に直接触った場合、あるいは、あまり例のないことですが、排泄物で食べ物を汚染した場合にだけ、病気をうつします。
他の地域では、コウモリはその地域の人間が食べるのと同じ果物を食べているかも知れません。すると、人間はコウモリの唾液から病気をもらうことになります。また、人間がコウモリそのものを食べる場合もあります。コウモリが健康そうに見える場合、ましてや健康に見えない場合に、コウモリを食べることはリスクが非常に高いと言えます。
参考記事: The Conversation
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