電気を使ってものを冷やす冷蔵庫ですが、エネルギーを使っているのにもかかわらず、温まらずに冷えるとは、いったいどんなトリックを使っているのでしょうか。
冷蔵庫はちょっとした仕組みを使って、熱を移動させることで冷やします。
冷蔵庫を理解するために、ちょっとした科学知識についてまず説明しましょう。
あなたの身の回りにある、触ったり感じたりできるすべてのものがとても小さな粒子である原子でできています。
原子は原子同士結びついて、様々な性質をもった分子となって、動き回っています。
原子も分子もとても小さく、特別強力な顕微鏡を使わないと見ることもできません。
固体、液体、気体
多くの物質は、主に3つの状態である、固体、液体、気体をとります。
氷や水、水蒸気が同じ物質の違う状態であることを思い出しましょう。
また、気体があまり熱くない時、蒸気と呼ぶこともあります。蒸気はまた別の状態ではあるのですが、ここでは気体として考えましょう。
氷のような固体内部の原子や分子は、互いに強く結びついていてほとんど動くことができません。
きれいな列を作って並んでいる場合、その固体は結晶と呼ばれます。
水のように、液体内部では、原子も分子も距離は近いのですが、結びつきが緩やかになり、動き回れるようになります。
水蒸気のような気体では、原子も分子もそれぞれが遠く離れた場所で自由に浮かんで飛び回っています。
空気を含む、ほとんどの気体は小さな分子でできています。
パーティーで使う浮かび上がる風船の中に入れるヘリウムという気体は、単独の原子だけで飛び回れる、数少ない例外です。
固体に少し熱を加えると、中の原子や分子はエネルギーを得て少しづつ振動し始めますが、きれいに並んでくっつきあったままです。
そこに、十分に強い熱を加えると、固体は液体へと変化します。
つまり、原子や分子の振動が強くなりすぎたために、列に並んだ状態にとどまれなくなって動き回るようになったのです。
ただ、並びはこわれてしまっているのですが、互いの距離は近いままです。
氷をボウルに入れて、ゆっくりと溶けるのを観察している時には、この現象がおきています。
液体が気体へと状態変化するときには、原子や分子は互いに完全に離れていかなければなりません。
粘り気のある近くの粒子から離れて飛び上がるためにはさらなる運動が必要であり、そのためにはさらなる熱が必要となります。
これらの状態変化に必要となる熱のことを、潜熱と呼びます。
ヤカンに水を入れて温め、口から湯気が出てくる時、この現象が起きています。
これらの分子や原子が、飛び去って行くときには、一緒に余分な熱が取り去られます。
汗をかいて、風に当たると涼しくなるのは、汗が気体になって飛び去る時に、熱を一緒に持ち去っていくからです。
では、これらとは逆の現象を見ていきましょう。
蒸気や湯気から熱を取り去ることで、液体に戻すことができます。
この現象が起きる時、液体には余分な熱が加えられることになります。
以上の科学知識を使えば、冷蔵庫の冷える仕組みを理解できます。
冷蔵庫が冷える仕組み
冷蔵庫の壁の内側には、冷却パイプと呼ばれるくねくね曲がった管が埋め込まれています。
その中には、簡単に気化する特別な液体である冷媒が満たされています。
冷却パイプにはコンプレッサーポンプがついていて、冷却パイプから蒸気を吸い取るようになっています。
この吸気によって、さらに冷媒が気化しやすくなり、それによって冷蔵庫内の熱が取り去られます。
風が汗を乾かす時に、涼しくなるのと同じ原理で、蒸気を取り去ることで冷蔵庫を冷やすのです。
次に、冷却パイプから吸い取った蒸気は、冷蔵庫の外にある曲がりくねったパイプへと押し込まれます、
ポンプによって蒸気が圧縮されると、分子同士の距離が縮まるため液化しやすくなります。
そのため圧縮された蒸気は液体に変化し始めるのです。
気体が液体に戻る時、冷蔵庫から取り去られた熱が潜熱として液体に戻ります。
そのため、冷蔵庫の背面にあるパイプは熱くなっているのです。
液体に戻った冷媒の熱は、パイプを通して外気へと逃げて、台所の空気を暖かくします。
言い換えると、コンプレッサーのポンプは、冷蔵庫内の熱を台所へと逃がし、冷蔵庫内部を冷たく、台所を暖かくしているのです。
冷蔵庫の背後や側面に近づくと、少し暖かく感じるはずです。
その熱は、冷蔵庫内にあったものなのです。
放熱して冷やされた液体の冷媒は、細い管を通って再び最初の冷却パイプへともどります。
そこで、ポンプによって吸われることで再び気化するというように、このサイクルを繰り返し行うことで、冷蔵庫の温度は低く保たれるのです。
つまり、冷蔵庫が冷たいのは、中の熱を外に逃がす仕組みがあるからであって、熱の総量を考えると、ポンプを動かしたりすることで熱が生み出されているので、増えているということになります。
エアコンも仕組みとしては同じようなもので、建物の外で温かい風を吹かせている室外機を通して、部屋の熱を外に逃がしているわけですね。
参考記事: The Conversation
コメント