米国の民間企業スペースXが、火星移住のために大量の物資や宇宙飛行士を輸送できる宇宙船を開発しています。それが「スターシップ」です
昨年末、スターシップのプロトタイプSN8が、フルスケールでの高高度打ち上げに初めて成功しました。
それだけでなく、着陸のためのフィンを使った水平の姿勢制御や、着陸時の垂直姿勢へのフリップなどにも成功。
しかし、着陸時に減速しきれずに地面に激突して爆発して大破しています。
最後は残念でしたが、試験としては大成功で、必要なデータをとることができたと、CEOであるイーロン・マスク氏も述べています。
SN8は失われてしまいましたが、次のプロトタイプSN9やSN10の準備はもうできており、SN9ではスラスターの試験も行われています。
イーロン・マスク氏によると、スターシップが完成するまでには最低でもSN20までのプロトタイプが必要になるだろうと述べており、失敗は最終的な成功に到達するための重要なステップであると考えているのです。
開発しているスペースX社といえば、民間としては初めてISSに宇宙飛行士を送ったクルードラゴンに、野口聡一宇宙飛行士が搭乗したことで日本でも有名になりました。
クルードラゴンを飛ばしたロケットもスペースXが開発した「ファルコン9」で、ロケットの1段目は自力で地上に着陸することができ、再利用することもできます。
ロケットを再利用することでコストを大幅に削減できるようにしたのは、NASAにもできなかったことです。
コストを下げることで、商業的に多くの人工衛星なども打ち上げているファルコン9なのですが、スターシップが完成するとさらに打ち上げ費用を削減できるといいます。
火星に移住するためには多くの物資を火星に送って、火星で自給自足できるところまで持っていく必要があります。
大量の物資を送るにはそれに比例したコストが掛かることになるのですが、一番費用のかかる打ち上げのコストを削減できれば、それだけ多くの物資を送ることができるようになるのです。
実はスターシップには、さらに1段目となるブースターのスーパーヘビーが付くことになっていて、その全長は120mでサターンVを抜いて史上最大となります。
その1段目にはスターシップでは6機取り付けられることになっているラプターエンジンが、37機も取り付けられることになっています。
それにより、低軌道へは100トンもの物資を送ることができるようになるのです。
また、スターシップにも3種類のタイプが作られることになっていて、一つは有人飛行ができ、物資も積める宇宙船であり、もう一つは、他のスターシップに給油できるタンカーそして、衛星打ち上げ専用機です。
上:スターシップタンカーのCG
最終的には火星を目指すスターシップですが、その能力から他の用途でも使用される計画です。
スターシップが完成すれば、現在のファルコン9や大型のファルコンヘビーのミッションを引き継ぐことになるでしょう。
また、NASAが計画している月へのミッションでの活躍も期待されています。
月は火星への中継基地として重要と考えられているので、火星へ向かう前に月に基地が作られることになるでしょう。
その前に前澤友作氏の月旅行がありましたね。芸術家を同行して月を周回するその旅行も、スターシップで行われます。
また、地球上でもスターシップは活躍することになります。
弾道軌道で世界中の2地点を1時間以内で結ぶ交通機関としてスターシップが使われる計画があるのです。
イーロン・マスク氏は早ければ2026年にも最初の宇宙飛行士を火星に送ることができるかもしれないと述べています。
野心的な目標ですが、今回の成功やスペースXが作るプロトタイプの開発スピードの速さを考えると、あながち夢物語ともいえません。
見上げた火星に誰かがいるという、物思いにふけてしまいそうな状況が20年代にも達成されてしまうかもしれません。
ヨシヤ
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