変幻自在!インフルエンザウイルスは変装名人

サイエンスニュース

寒くなると流行し始める、つらいインフルエンザ。予防するには毎年ワクチン接種する必要がありますが、それはインフルエンザウイルスが変異して昨年と今年ではタイプが変わり、去年できた抗体が効かなくなっているからです。しかし、どのように変異しているのかは謎でした。

新たな研究では、この変異が偶然による遺伝子の突然変異によるものではなく、タンパク質の組み合わせを変える仕組みを持つためであることがわかりました。研究はワシントン大学とUCバークレーでおこなわれ、「Cell」で発表されています。

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インフルエンザウイルスは細胞へ感染し、様々な形をした子孫を生産することができます。それによって、抗ウイルス治療による攻撃から逃れる可能性を最大限に上げることができるのです。

抗体やワクチンの標的となっているのは、ウイルス粒子の表面のタンパク質です。しかし、インフルエンザウイルスは一組のタンパク質を他の組み合わせのタンパク質へとすばやく変更することができるため、追跡や治療を難しくしています。

Credit: Eye of Science/SPL

研究者たちは、インフルエンザウイルスの系統をつくり、その複数種類のある表面タンパク質に、それぞれ特異な色の蛍光マーカーを付けました。そして、このウイルスを細胞に感染させ一世代だけ複製させました。遺伝子に顕著な突然変異が入るすきをなくすためです。この細胞は、各種のマーカーの大量の組み合わせを持ったウイルス粒子を放出しました。つまり、ウイルスは遺伝子に突然変異が入らなくても、異なる組み合わせの構造を作れるのです。

1つの表面タンパク質だけでなく多くを標的にすることで、新たな抗ウイルス治療をデザインでき、それによりインフルエンザに対してもっと効果的な治療をおこなえると、研究者たちは述べています。

変幻自在で治療を逃れるインフルエンザウイルスですが、からくりがわかれば効果的な治療法も開発できます。タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬はウイルスを殺せすわけではなく、増殖を抑えるだけなので、初期に投与しないと意味がありません。ウイルスを排除できる新しい治療法が開発されるのを期待しましょう。

参考記事: Nature

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