低温環境で育つと長生きするというのはご存知でしたか?多くの生物で、低温にさらされると、代謝が遅くなるとともに、生存期間も長くなることが知られています。しかし、老化がどうして起こり、寿命がどのように決められているのかは、未だによくわかっていません。
遺伝子や環境が関わっていることは確かだと言えますが、どの程度遺伝子が寄与し、どの程度環境の影響を受けるのか、詳しくはわかっていないのです。
今回の新たな研究の結果から、温度という環境の影響が、ただ単に熱力学的な反応を遅くするだけでなく、個別の遺伝子に影響することで、寿命がコントロールされている可能性が示されています。研究は海洋生物学研究所(MBL)のクリスティン・ギブルらによって行われ、“Experimental Gerentology”で発表されています。
研究に使われたのは輪虫です。輪虫は寿命の研究に100年以上使われている小さな動物(プランクトン)です。遺伝的にはっきり異なった11種類の輪虫を低温下において、寿命を調べるという実験を行いました。もし、低温における寿命の延長が、熱力学的反応の低下から来ているとすれば、すべての種類の輪虫の寿命の伸び率は同じになるはずです。
しかし、実験の結果は、違っていました。寿命の伸び率の中央値は、種類によって6%から100%と幅広く分布していることがわかったのです。つまり、熱力学的反応以外の何らかの機構によって、積極的に生存期間が調節されていることになります。そのような仕組みがあるとすれば、当然何らかの遺伝子が関わっていなければなりません。
その仕組は、活性酸素によるダメージの蓄積だと研究者たちは考えています。活性酸素は代謝の過程で放出され、細胞内の様々な物質と反応してダメージを及ぼし、老化を促進すると考えられています。低温に反応した遺伝子が代謝を調節して遅らせ、活性酸素の発生が抑えられることで、結果として長寿につながると考えられるのです。
この低温に反応して寿命を延ばす遺伝子が何かはわかっていませんし、人間もその遺伝子を持っているのかもわかりません。しかし、単なる熱力学的な反応速度低下以外に寿命を調整する仕組みがあるのは確かなようです。この仕組が解明されることで、長生きする秘訣が得られるかもしれません。毎日水浴びして体を冷やせば長生きできるかも?自己責任でよろしくおねがいします。風邪を引かないでね!
参考記事: Phys.org
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